●ここからは自転車NAVITIMEを使う
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本日走る女川~気仙沼エリアだけは、三陸海岸内で僕が唯一訪問した事が無いエリア(多分)。
目指すは気仙沼市の「気仙沼パークホテル」。
そのキョリ93.6km

よくよく考えてみると、この時間から走りたいと思うキョリではない。
しかも、舞台はリアス式海岸!
高低差はどうか?







●うっ
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見た事ないくらいギザギザ
しかし、高低差は大した事なさそう。
巡航時速15kmを維持できるかはあやしいが、泣きが入ることはあるまい。







●女川港を背に進む
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気温24度、風はごく弱い追い風!
かなりいい気分で走り出す!!!









三陸タイトル図


(2)

「女川~南三陸」の巻








●走り出してすぐ判る
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広い!なだらか!走りやすい!
これ、明らかに近年整えられた道だ。








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トンネルに向かう道もなだらかでのぼりやすい!
擁壁も含め、全てが新時代の規格と感じる。
「僕の記憶にある三陸の道」と真逆だ








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『めっちゃ気持ちいい!』
新緑の中、なだらかな坂を進む
すると・・・






●リアス海岸らしき光景が広がってきた
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小さな漁港、海の向こういくえにも重なる岬の陰。
2021年GWの「紀伊半島ポタ」でも存分に堪能した「リアス式」の海岸
この先、ゆく先々で素晴らしい景色を見れるはず








ところが・・・







●岬の道を下り始めるとすぐに・・・
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うっ!







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「ああ・・・・」

先の漁港の背後は一面の更地
11年以上経っても、こうなのか・・・。
その光景に、しばらく嘆息する。





●『…なんか、ドライブの時と全然違く感じる』
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僕は震災後、既に複数回自動車で三陸海岸を訪ねている。
先ほどの様な更地も、当然、何度か見ている。
その上で、今回やって来た。

『こんなに違って感じるものか』

クルマと違って、全て開け放たれ、かつ鈍足。目の前の環境の大きさが、クルマで移動して体感する時とケタ違いだ。
また、エンジン・モーター音、あるいは幅広のタイヤの走行音も無ければ、ランニングの様な振動も呼吸の粗さもない。周囲の環境の要素・・・気温も、風も、においも、飛んでる虫の数も、地面の傾き・ちょっとした高低差の違い、etc・・・
何もかもが五感に最も鋭く突き刺さってくる旅こそ「自転車旅」






●遠くに見えるはいい景色
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どこの地域でも見られる穏やかな漁村の風景。






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しかし、行く手に伸びる道沿いの景色は違う。






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防潮堤工事が続く場所も依然として多く、1か所1か所の規模が広大と判る。
『かつて田老町だけが誇っていたような規模の巨大防潮堤が、どれほどの広さで張り巡らされたというのか』







●実は補給にも手こずっていた
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女川駅近くの混雑コンビニを避けた後、最初の自販機を見つけるまで20kmかかった
今の三陸、もしかすると紀伊半島の海岸線以上に給水困難か!?






●「うーむ・・・」
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この写真にもある様に、環境は決して悪くない道なのだ。





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水田地帯で「ケロケロ」響くアマガエルの鳴き声に癒されたりもする
しかし、程なく、真新しい巨大防潮堤や広大な工事現場に出逢うことになる。
いつものポタの様に「ああいいなあ」と思う環境が長続きしてくれない。
かなりの田舎に来て、こういう事はとても珍しい。








●14:37 追波川(オッパガワ)に差し掛かる
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新北上川ともいう。
要は、昭和初期に洪水対策で北上川最下流部に開削された放水路。
我が郷土も流るる大河が誇らしくなる、なかなかの景色







●新北上大橋
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木曽川河口付近の長大な橋梁にも匹敵しそうな長さ。
だが、時間当たりの通行量は1/1,000以下かも知れない。

さて、実はこの橋のすぐ近くに「旧大川小学校」がある。
大震災で完全に水没してしまった、あの小学校だ。






(震災から数日後の空中写真)
新北上大橋

大川小学校は、訪ねてみるつもりだった。
しかし、BROMPTONくんで向かったとして、大勢の子どもが亡くなった場所が進路に見えてきた時点で、僕は走れなくなるかも知れないなと感じていた。

『クルマの時とあまりに違うからな・・・』

現に今、学校の方向を向く気にならない。
ここは、別の機会に訪ねることにしよう。






●小学校をスルーして、橋を渡る
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橋を渡った後、追波川河口に向かって進む。
すると、かなり強くなっていた追い風が背中をガンガンに押してくれる様になった。

『こりゃいいぞ

初めて見た追波川の河口、予想よりずっと広くて雄大な眺め
そういや、こういう、ひとっ気の無い海岸線は、もともとの三陸の魅力でもあると思う。







●15:08、32km地点で自販機を発見!
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ドリンクを3本(1.5L)購入してひと安心フゥ
三陸海岸、マジで給水ポイントが少ない。
もしも真夏だったら、どえらいことだった。






●出発から2時間半、41km先まで来てようやく・・・
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女川を出発して、初めてストア発見!!
なにか食べ物を調達しよう!







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ど田舎ポタ時に好んで食べる菓子パン「イチゴスペシャル」(ヤマザキ)を頂く(*v.v)。。
美味しく、500kcalくらい補給できる

ここまでの所、肉体的な疲労はあまりない。
平均時速も16kmをキープ。なかなか快調で、5分も休めば十分な感じ。






●15:40、南三陸町到達
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防災庁舎のエピソードが脳裏に焼き付いている町だ。






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2011年当時の人口17,000人、うち1,200人が死者・行方不明者となってしまった南三陸町。
町の区域に入ると、防潮堤や更地はこれまでの地域と同じだが、高台に多数の家々があると感じた。
再建によるのかもともとなのか判らないが、家々が連なっていることに安堵を感じる。









しかし、この区画を過ぎて、僕の視界に広がった入江の景色は・・・










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これまで、国内のポタ旅で、ここまで衝撃を感じた景色は無かったかも知れない。









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なんちゅう景色だ。何もかも無くなってしまっている。
自分のふるさとがこうなってしまったら、僕は正気を保てるだろうか。










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●・・・この旅、キツイぞ
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『僕が感傷的過ぎるだけなのか?』
自問して進むうちに、周囲が少し開けてきた。







●南三陸町の中心部(だった場所)に到達したらしい
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進路に震災遺構っぽい建造物がある。
ちょっと見てみよう。





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塔屋含めて4階建ての施設跡らしい。
今は新しい巨大堤防に囲まれて一棟のみだが、以前は多分町なかだった事だろう。







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津波の水位表示が建物の3階天井付近に貼られている。
『15mくらいありそうだぞ』






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この建物は結婚式場だったそうだ。
地震当時、芸能大会開催中で大勢のお年寄りが集まっていたが、熱心に防災訓練していたスタッフの誘導があり、ここに逃げてきた地域の人も含め327名と犬2匹の命が救われたという。
津波の高さは新しい防潮堤を優に超える高さだったのが窺えるし、この建物にいた事は、まさに僥倖だったろう。






●その近くにあるのが
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とても有名な、南三陸町の防災庁舎。
周囲は復興祈念公園として整備されていた。ここは、近くに行ってみよう。






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TVで見た通りの様子だったが、説明板によると、「第1庁舎・第2庁舎」といった他の大きな建物もこの辺りにあったらしい。いずれも津波で流されたそうだ。







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3階建ての防災庁舎の避難場所は「屋上」。
かつてのチリ地震津波の水深2.4mに対して12mの高さがあった。
東日本大震災発生後、付近の津波の予想高は当初は6mで、庁舎の3階以上で避難できるハズだった。
しかし、当地に襲来した津波の高さは15.5m。
ここの水深も屋上さらに2mに達し、もはや逃げ場なく多くの人が流されてしまった。
防災無線で最後まで避難を呼びかけた当時24歳の町役場職員・遠藤未希さんもここで亡くなっている。
思わず、手を合わせずにはいられなかった。







●・・・この旅、難しい



ドライブの時と全っ然違う。
のんびりBROMPTONポタではあまりにも「刺さり過ぎる」
『この先の道も、きっと同じだ・・・』







●急激に気持ちがしぼむのを感じた

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そんな僕の目線に飛び込んできたのが・・・









●え?・・・森高千里
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・・・いや、千里か。
この人、たしか大名古屋出身のレースクイーンだった人だ。なぜ、ここに???
それはともかく、僕のアタマの中にはあの名曲が流れ始める。








●気分爽快(森千里 1994)


そうだ、「飲もう!今日はとことん飲みまくろう!」

早いとこ、投宿地の気仙沼に達して、気分爽快になろう!







●しかし、目的地のホテルまで残り30km、2時間かかる
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そんな僕の目線に飛び込んできたのが・・・







気仙沼線BRTの駅だった!
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ううっ!この誘惑はッ!!




(つづく)





気力の落ち込みに苦しむKOU!
そんな僕の目の前に現れたBRT(バス・ラピッド・トランジット)の駅!
BRTを使えば、投宿先のホテル前にスムーズにワープできる!
しかし、それをすると『三陸海岸縦断ポタ』を堂々と語る事はできなくなる!
果たして僕は、手抜きの誘惑を押しのけて気仙沼まで走破できるのか!?
そして、気仙沼市でケチケチしつつおいしい晩ごはんにありつけるのか!?

次回「港町・気仙沼の夜はふけゆく」の巻





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