●奈良県生駒市で借りたオリックスレンタカーを、あべのハルカス店舗で乗り捨てする
Y:「こっちのセリフだよ
」
建物の中央部に位置している庭も、家屋内に造りこまれた意匠も、

乗り捨て代はかかるものの、乗用車の機動力はやはり強力で、しかも雨降りにも完璧な対応が出来た。
そして、いつもの『珍スポ旅シリーズ』ではYに車を出してもらっている都合でお酒を楽しむ事が出来ないが、
今回は帰りも近鉄特急を使う選択をしており、大阪での飲み食いを十分に楽しめる様に工夫した。
我ながら完璧なプランニング

●しかし、レンタカーを返してしばらくした後、僕がそのまま車のカギを持ち出してしまった事が発覚

レンタカー店の人(電話):「・・・と、いう訳で、鍵をお返し頂きたいのですが!」
KOU:「あ~、う~、なるほど。何時までにお返しすればいいですかね?」
レンタカー店の人(電話):「とにかく、今、中にも入れないし、動かせない状態だし、一刻の猶予も!」
KOU:「・・・ですよね
」

かーっ、ハルカスからトコトコ15分ほど歩いてきて、もうちょっとで着くところだったのに



KOU:「・・・というわけで、レンタカー店に戻る事に相成りました
」

Y:「え~っ
」


●KOU:「ホント、心から思う」(*v.v)。。


KOU:「すまないねえ・・・ってか、1人だけ先に店に行って、待っていてくれていてもいいんだけど・・・」
Y:「店が店だし、場所も場所だし、さすがに1人じゃイヤですよ
」


だよなあ。すまないねえ、いつも苦労をかけるねえ



珍スポ探訪記 2018大阪篇 6
〈飛田新地 『遊郭改装料亭と本物の遊郭の違い』の巻〉
●と、いうわけでレンタカー屋にトコトコ戻り、今度はタクシーで向かう事に

運転手さん:「ああ、新地のあの店ね」
すぐに判る程度には有名なお店らしい。
阿倍野の交差点は渋滞が酷かったが、そこを過ぎるとタクシーはスイスイ走り・・・
●やがて『飛田新地』のそれと思しきゲートが見えてきた

運転手さん:「あそこから先が新地ですよ
まあ、こういう街は大阪でもここだけですねえ」

吉原みたいな感じなのかな?と、いっても仕事で16~7年前に行ったきりで、ほとんど覚えてないが・・・。
Y:「この街ではカメラは絶対にご法度とかいう事だし、結構すごそうな予感
」

Yも飛田新地の様なザ・風俗街の様な街に来るのは初めてらしく、かなりワクワクしている様子。
●あれ?思ったより寂しい感じ

車からの流し撮りなら『街の雰囲気だけ切り取って誰なのかは全く分からない様な写真』が撮れる訳だが、
それにしても、少し寒さを感じるくらいスッカスカ感が漂っている。
Y:「雨だからかしら
?」

KOU:「確かにいささか拍子抜けではあるけれど・・・風俗街なんてこんなものなんじゃないの?」
考えてみれば、今回は『珍スポ』という理由があってやってきたが、
僕は風俗にキョーミが無くてこういう街には来ないので、自分のその価値観でしか物言いできない。
KOU:「まあ、ごはんを食べた後で探索すればよかろう
」

Y:「そうしましょう
」

運転手さん:「着きやしたぜ」
●鯛よし百番

昔からそうだが、Yは人が写真を撮っているところにけっこうズカズカ入っていくタイプだ・・・
まあ、それはともかく『百番』は大正時代に建てられた遊郭を(本当に純粋な)料亭として使っているお店。
多分、相当に有名な店だと思うが、僕は大阪珍スポ旅の行先を探すまで、知らなかった。
●やたら凝った造りの内装が目に飛び込んでくる

ああ、ちゃんと歴史的な事を下調べしてから来れば、こういう造形の理由・意味をもっと楽しめたのだろう。

玄関近くにあるこういった部屋は、客室だったのだろうか?
東洋的な壁絵に対して、洋風の応接セット。
大正時代の実業家の家は、迎賓館的な洋館と、家族が暮らす為の和風家屋を両方建てていたが、
なるほど、たしかにあれらと同時代の香りがする様な気も。

Y:「建物の中に大きな橋が
!」

●そのむき出しの橋がかかっている『中庭』も、いい味を出している

お客を楽しませようとする心意気が伝わってくるではないか。
●純和風の伝統的店舗の中を、アラブ系外国人のスタッフさんに案内されて客室に向かう

Y:「遊郭ってのは、女の子がいて、男性相手にエッチしてお金を稼ぐ場所だったのかしら?」
KOU:「表向きは『料亭』として、一応、ちゃんと食事も出して接待して、
その後別室で寝る、というサービスだったみたいだけれど・・・」
でも、ちゃんと文献とかで調べたわけじゃなくて、ネットに転がっている情報拾っただけの話だ。
全然、正しくないんじゃないかと思う。
●店員さん:「コチラデゴザイマス」

ほお、僕らの部屋は東海道五十三次の『島田宿』という部屋らしい。

各所に目立つ、凝った意匠。
なるほど、こういう遊び心がお客の気持ちをアゲるであろう事は、僕にも判るぞ

障子を開けて中に入ると・・・
●おおっ
!


これは、粋(イキ)な小部屋!
なるほど、東海道の島田宿は駿河国(現在の静岡県)の大井川に面した宿場町だった。
当時、大井川は幕府の防衛の都合で架橋や渡し舟が禁止され、
渡河は人足が旅人や物資を持ち上げて運ぶ方法に限られていた。

KOU;「この天井絵は、その様子だよ」
Y:「へえ~
」

ゆえに、川止め(増水による通行止め)はしょっちゅうで、旅人の滞在が増える宿場は大変栄えた。
その賑やかな宿場に『屋形船』があったかどうか判らないが、
今、僕らが座っている小座敷が屋形船を模しているのは、それをイメージした意匠と思う。
そして、遊女が屋形船に乗ってサービス提供する事は江戸時代以前から各地であったと聞くから、
この小座敷で食事をするという事自体、往時の屋形船でのサービスをデザインされているのだと思う。
江戸時代がずっと近かった『大正人』たちには多分そういった事は常識で、
この意匠の面白さもよりストレートに伝わって、

みたいな感じで、ノリノリになったのかも知れない

Yにはそんな事は説明しないが、多分、そうなんだろうと思う。
●「箱根八里は馬でも越すが、越すに越されぬ大井川」・・・か(*v.v)。。

大学時代の親友Tが、ふとした時に呟いた島田宿のウンチクが記憶に残っていたおかげで、
この部屋を一瞬見ただけで意匠の面白さを自分なりに解釈して楽しめた・・・間違った解釈かもだがな。
お前が自殺してからもう10か月か。まだ、2~4日に1日くらいの割合で思い出すよ。
これからも、折に触れて僕を楽しませてくれ。
●Y:「なかなか味のある部屋
」


とはいえ、壁などの汚れがかなり目立っている様な気はする。
こういう壁は、左官屋さんがリフォームしたりするものなんじゃないかと思うんだけれど、
それによって文化的価値が損なわれたりするかどうかは僕には判らないしな。
ただ、僕のばあちゃん世代が生まれた頃の、一般家屋とさほど変わらない木造建築飲食店で、
こうやってごはんを食べられるというのは素敵な事だと思う

できれば、じいちゃんやばあちゃんたちを、こういう古い建物の中での食事に連れ出したかったな・・・
まあ、じいちゃんはともかく、
ばあちゃんたちには「そったらとこで飯喰うなんて、とんでもね
!」なんて怒られそうだが



●では、珍スポ旅シリーズではお初の・・・

おビールで乾杯



ゴキュゴキュゴキュ・・・><;
あひィ、美味い
!!

●メニューは、色々なお鍋の中から『鯛ちり鍋』を選んでいた

なんたって、店名が『鯛よし』だしね

あと、串カツなんかも食べて行きたかったので『出来るだけ軽めのもの』にしたという事。
なので、オードブルセットとかも無し。
●ほどなく、鍋は出来上がり♪

ホロホロになった身。
これをポン酢たれに浸し、箸でつまみ上げてパクリ・・・!
お、美味しい
!


鯛の鍋って、今まで食べた記憶があまり無かったけれど、口あたりも、身のほぐれ方も、
ふわっと広がる風合いも、絶品じゃないですか
!

この環境・この鍋で1人前3,000円とは、珍スポファンにとっては謝恩価格と言ってもいいくらい破格値だろう。

Y:「この後、飛田新地、どんな人がいるのか楽しみ~
」

KOU:「どうかね。さっきとあんま変わんないんじゃないの?」
Y:「でも、アイドルみたいな子が多いって、運ちゃん言ってたし・・・」
そういってスマホをいじり「飛田新地は女の子のレベルが異常に高いって!」とか言う。
うーむ・・・風俗やらキャバクラやらに疎い僕には『女の子のレベルが高い』がさっぱりイメージできない。
Y:「あら?でも、『女性やカップルは飛田新地を歩かない方がいい』って。どういう事かしら?」
KOU:「ああ、それなら僕にも想像つくわ。
商売している女の子にとってみれば、ひやかしに来られている様に感じて気分悪いんじゃ?」
スマホでちょっと検索してみると、昔は一般の女の子が歩くと、水をぶっかけられたりしたらしい。
Y:「ええ~?ホントかしら
」

KOU:「生卵とか飛んでくるかもよ
」

Y:「でも、女性がお客になる場合もあるんじゃないかと思うんだけどな」
KOU:「え?遊郭で?そりゃあどうなんだろう
?」

Y:「40分1万2000円とかなんでしょ?お金払えば、女だってお客になるわけでしょう」
KOU:「うーん、でも、やっぱバカにされてる感覚になったり、
女相手じゃ生理的に無理な女の子も多そうじゃない?」
Y:「そんなもんかしら?」
KOU:「キョーミあれば行ってみれば
?


40分でしょ?僕はどっかでお茶でも飲んで時間潰しているから、遊んでスッキリしてくるといい(笑)」
・・・と、この時点で飛田新地の事を全く知らなかった僕は、そんな事を言っていた。
●美味しかった


トイレに行きがてら店内を少し歩いてみたら、会社の飲み会で使っているグループが多い感じ。
勿論、女性の姿も見かける。
ホント、ちょっと変わっていて楽しいお店

●男性トイレの天井絵は美しかった

こんな豪華なデザインのトイレ、使った事ないや。
一方で、女子トイレの天井は特に何も無いらしく、Yがガッカリしていた。
おそらく、男性トイレを使う人は大半がお客様で、女子トイレを使う人は基本全て従業員だったからだろう。
●満足満足
♪


お、雨も完全に上がったようだ

そして、この後、予定通りYと飛田新地の遊郭内を歩く・・・
歩き始めて、すぐに気づく。
さっきのタクシーから見た景色と全然違う。
なんと、通りという通りが人で溢れているではないか
!!

しかも・・・
Y:「男しかいない
」

消え入りそうな声でYは言い、以降、顔を上げる事が出来ないようだった。
ホント、街じゅう男しかいない。男性率100%だ

しかも
KOU:「客がいるとしたらおっさんだらけなんじゃないかと思っていたけど、若い人ばっかりだ
」

見る限り、20代のグループ客だらけに見える。体育会系っぽい、ガッシリした人が多い様な。
30代以上の人は、結構少ないように見えるぞ。
これは結構ビックリ。
こういう街は、金使わないと若い子になかなか相手してもらえないような
僕ら世代以上のおっさんどもばかりなんじゃないかと思っていたのが、
こんなに若い人たちが、40分1万2000円とか使って風俗で遊んでるのかあ

とにかく、その数に圧倒される。
『お金勿体ないだろう』とか『金出してもらっても嫌だ』と思ってしまう僕の価値観はやはりマイノリティで、
ここで遊んでいる若者たちの感覚がマジョリティなんだろうと思わざるを得ない。
KOU:「いやあ、びっくりだ。すごいよ、Yくん」
Y:「もう、いいから、早くこのエリアから出たい
」

Yは、もう、女でも遊びに行けるかどうか試すどころではないようだ。
ここで、初めて『置屋』を見る。
どの置屋も小さな2階建で、3~4畳くらいのスペースに綺麗な女の子が座り、お愛想を振りまいている。
なるほど、確かにかわいい女の子ばっかりだ

フツーに、全国ネットのドラマとかに起用されてても不思議じゃないような顔立ち。
面白いのは、必ずその女の子の近くに『おばば』みたいなのも座っていて、
通りかかる男に呼び込みをしているというシステムだった。
おばば:「にいさんにいさん、あと一歩、あと一歩だけ近寄って、見てってちょうだい」
などと呼び掛けて、男を女の子に接近させようとしている。
KOU:「へえ~、この街では黒服じゃないんだ
ねえ、面白いよ」

Y:「いや、もう、ちょっと、とにかく早くここを出たい
」


そりゃそうだ。
置屋のおばばたちからはウザそうな視線をとばされ(それは2人連れで歩いてる僕も同じだが)、
通りじゅう『ヤル気満々』の若くてガタイのいい連中で溢れかえっているわけだからな。
KOU:「じゃあ、最後にもう一周してから・・・」
と言いかけたがぶん殴られそうな感じだったので、とりあえず、飛田新地から出る事にした。
●Y:「いやあ、キツかった」

判るわあ。
たまたま寿司づめの女性専用車に間違って乗ってしまった時の様な感覚だろうな。
逃げるに逃げられない、そして自分のそれと違う臭いが充満していて、『居場所じゃない』と思わされる感覚。
Yは少しの間ぐったりしていたが、すぐに復活して、元気になった。
飛田新地、なかなか面白い場所だった。
『珍スポ』ではないが、色々な欲望がストレートなカタチで表現されつつも、
社会に残る『おおらかさ』みたいなものによって、存在を許されているんじゃないかな。
世の中の多様性であったり、受け皿であったり、娯楽であったり、生活の中の癒しであったり、
僕にとっての珍スポめぐりも似たようなものかも知れないな。
KOU:「それでは、新世界で串カツ食べて、また軽く飲んで、名古屋に帰る事にしますか
」

Y:「賛成
!」

2018大阪珍スポ旅最終立ち寄り地・新世界に向かう







コメント