(3)アバカンにて・ガイドたちとの出会い

●アバカン国際空港
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ここはハカス共和国の首都・アバカン市。人口およそ16万人。

現地時間は7月20日の朝8時10分。時差は日本時間からマイナス2時間に縮まった。

成田から片道22時間10分。

思ったより遠かった・・・。













●空港でガイドと落ち合う
歩いてもたいして変わらない距離を一応バスに乗って移動して、古ぼけた空港建物の中に入ると、

非常に狭いエントランスに乗客を迎えに来た様な人が集まっていた。

やっぱり、ほとんどスラブ系とコーカサス系じゃないだろうか。

その人たちの邪魔にならないよう、裏側をすり抜けて先に進むと、

すぐに暗い暗い、びっくりするほど暗くて狭いバゲッジルーム。

そこが、今、乗ってきた飛行機の客でごった返していて、いかにも第三世界っぽいカオス感を醸し出している。

この雰囲気、嫌いじゃないけど、疲れてるからキツイ。

ふと、その先に、僕の名前がアルファベットで書かれたボードを持っている男を発見。

『でかい・・・

身長190cmくらいありそうな細身のスラブ人の大男。頭が少し薄いけど、年齢は30歳くらいか。

となりにもう一人。身長180cmくらいの、がっちりした男。彼は20代後半くらいかな。

トコトコ近づいていくと、2人は顔を見合わせて、「お前がKOUか?」と訊いてきた。










長身の男:「おお、会えてよかったよ。俺はトーマス。こいつはセルゲイ(ごめん、名前忘れた)。よろしくな」

KOU:「僕はKOU。こちらこそ、よろしく・・・」

とりあえず、会えてホッとしたよ。

・・・本当にクタクタだったので、挨拶の後二言目には「遠すぎ」と、つい、愚痴ってしまった。

ガイドが2人いる理由だが、トーマスが責任者で、セルゲイは運転手との事。

ガイドさんつける旅行なんて初めてだが、2名もついてくれるなんて、手厚い感じで嬉しい。




CM

ちなみに今回の旅は、財団法人全抑協(全国抑留者協会)から紹介されたロシアに強い旅行会社

『㈱エムオーツーリスト CISロシアセンター』に手伝ってもらっていますが、

色々な相談に対してものすごくレスポンスが早く、非常に安心感がありました。





その旅行社からは「アバカンにいるガイドは英語は片言しか喋れない」と事前に聞いていたのだけれど、

トーマスは、少なくとも僕の様なそれこそ片言レベル話者からしてみると『十分ペラペラ』だった。

ちなみに、セルゲイはいい奴だけど、英語はひと言も喋れない。

そんな訳で、バゲッジルームで回収した荷物、空港の前に止めた車までこの2人が運んでくれた。

『これはいいぞ。こんな旅は初めてだ!』

・・・そんな事を思っていると、反対側からやってきた大男がいきなり話かけてきた。

謎の大男:「あんたが客人か。会えて嬉しいよ。ようこそハカスへ」

KOU:「!?」

トーマス:「KOU、その男も仲間さ。心配しなくていい」

KOU:「仲間って・・・3人も???」

謎の大男:「俺はニコライ(ごめん、名前忘れた)。英語はあまり話せないんだが、よろしくな」

KOU:「ああ、僕もほとんど話せんです。よろしく・・・」

旅行社には全部支払い終わってるので、ガイドが何人来てくれても構わんけど、3人とは!!

ニコライは明らかにモンゴロイドで、僕らと同じアジア人っぽい風貌。

スラブ人の2人とは違い横幅も大きく、人懐っこさというか、ハカスの大地によく似合う素朴な大男だ。

3人の中で一番親切・親身で、短い道中ではあるものの、色々話をする事になる。








●空港の前で時間合わせ
トーマス:「おい、KOU。今、ここアバカンが何時かわかるか?言ってみろ」

KOU:「ええと・・・10時!」

トーマス:「違う!今、アバカンは朝の9時だ。ちゃんと時計を合わせておけ」

KOU:「ええ???」

そんな筈はない。

モスクワで、スマホの時計をアバカンと同じタイムゾーン『クラスノヤルスク』に合わせてきているし。

「それはハカシアンジョークでしょ」

しごく真面目に言ったつもりだったが、3人はハッハッハみたいな感じで苦笑いして、

それぞれの腕時計を僕に突き出してきました。

おお、全員の時計が9時だ。随分手の込んだジョーク・・・

トーマス:「おい、KOU。俺たちはジョークを言ってるわけじゃない。早くお前の時計もハカス時間に合わせろ」

KOU:「いや、絶対におかしいって」

・・・と、つぶやきつつ、スマホのワールドクロックを連中の前で見せながら操作する。

トーマス:「ここのタイムゾーンは+7:00だ」

KOU:「知ってるよ。クラスノヤルスクと同じだろ?」

トーマス:「その通りだ」

KOU:「この時計はクラスノヤルスク時間に合わせているんだが」

トーマス:「知るか。その文字は日本語か?俺には読めん。判るのは、お前の時計が間違っている事だけだ」

KOU:「どういう事???」

トーマス:「貸してみろ」

彼はそう言ってスマホをいじり始めたが、「セントジョン」とか「デンバー」とか、

明らかに北米大陸の都市の名前をポチポチ押し始めた。

こいつ、日本語が読めないのはともかく、+-関係なく『タイムゾーンが7:00ずれている街』を押してやがる

結果、僕のスマホの上は、アバカンと全く関係無いタイムゾーンの都市の時計でぐちゃぐちゃになった。

トーマス:「HAHAHAHAHA!!!!」

なんか、つられて爆笑してしまう。

トーマスは苦しそうにヒーヒー笑いながら、

「いいかKOU、よく聞け。とりあえず、お前の時間は狂ってる。この町の時間はお前の時計より

1時間ゆっくり流れているから、俺たちが時間を口にした時は、ちゃんと計算して行動しろよ」









●ホテルへ
アバカンでの宿泊先・アンザスホテルへは、セルゲイが運転するトヨタ車『クレスタ』で移動。

トーマスがガイドとして着くのかと思ったのですが、彼は別のクルマで先導し、

助手席に座ったニコライが道中の建物を色々説明してくれる。

アバカンの街の景色については、別の項でゆっくり説明するけど、

『いかにも大陸の田舎町』と言った感じ。

古い建物、新しい建物、懐かしい街並み、ちょっとした高層建築、でこぼこしたアスファルト、

トロリーバス、レトロなトラック、教会、公園、廃墟、様々な人々、土埃。

ただ、僕が今まで見た外国の景色と決定的に違う点がひとつ。

『西側諸国の商活動が、ほぼ見当たらない!』

たとえばマック、KFC、SUBWAY、APPLE、SONY、TOYOTA、GM、FILIPS、SUMSUNG・・・無い(多分)。

コンビニも1軒も無い。

代わりに軒を連ねているのは、個人事業主の商店だったりする。

思えば、僕が子供の頃、東北のような田舎町の景色はこういう感じだったような・・・

あの頃の盛岡には、マックも吉野家もガストもコンビニも無かったなあ。

それぞれの土地でそれぞれの事業主が頑張ってたね。

異国を感じさせられるというより、日本の数十年の変化を感じさせられた15分程度の道のりだった。

町の様子は、別の記事でご紹介しよう。








●ホテルへのチェックインで戸惑う
到着したのは綺麗な緑色の壁をした、小さなホテル。

ドアを開けて中に入ると狭めだけど、なんかちょっとかわいらしく見える小さなカウンターがあり、

経営者っぽいおばさんがいた。

旅行会社が既に手配してくれているので、僕のチェックインはスムーズにいく筈。

そういえば、旅行会社が言うには町の中では英語が通じない筈だったが、

このおばさんも英語は話せて、コミュニケーションをとる事が出来た。

※多分、「一部のホテル」と「空港の一部の係員」は、英語が通じそう。他は警官含めてダメだった。



ロシアのホテルのチェックインでは『パスポート・査証』『出入国カード』『宿泊バウチャー』を提出する。

これによって、ホテルのスタッフが旅行者の『滞在登録書類』というものを作成し、

地域の移民局に提出するという作業があるのだそう。

アンザスホテルでは『宿泊バウチャー』は特に不要という事で、パスポートと出入国カードを預ける。

この段取りは最初から判ってはいたものの、外国でパスポートを他人の手に預けるなんて初めての経験で、

あまり気持ちのいいものではない。

KOU:「例えば外にご飯を食べに行こうとする時、僕はパスポート携帯しないで問題ないの?」

トーマス:「何言ってるんだ?この後、お前はシャワー浴びて寝るんだろう。そして、その後、じいさんの墓参りだ。

  その時には、もう、手続きは終わってパスポートは戻ってきている。それとも、メシ喰いに行きたいのか?」

KOU:「いや、とりあえず、カラダ洗って寝たい」

トーマス:「そうだろう。それで、何時にお前を迎えにくればいい?」

KOU:「そうだな・・・4時くらいまでは寝たいな」

トーマス:「それは、お前の時計の午後4時か?それとも、ハカス時間の午後4時か?」

KOU:「お前たちの時間の午後4時だ」

トーマス:「それなら、お前の時計で午後5時だ。お前の時計の午後5時に迎えに来るから、間違えるなよ」












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ロシアのホテルは一般的には14時過ぎじゃないとチェックイン出来ないらしいのだが、

この時は多分10時ぐらいにチェックインさせてもらえたんじゃないかと思う。

僕の泊った401号室はこんな感じの部屋。












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寝心地よさそうなベッド。

シャワー浴びて寝転がったら、実際、寝心地良かった。

ホテルは無料WI-FIが完備されていて、部屋やロビーにいる限りはネット接続に困る事は無かった。

一方、AUのグローバルパスポートでホテルの外でもケータイつながる事はつながるのだけれど、

LTE回線はなく、3Gだったり2Gになったり、データ通信は出来ないらしい。

そんな事をちょっと試して、すぐに眠りに落ちる。

モスクワの空港では勿論、飛行機の中でもほとんど眠れなかったので、本当に気持ちよかった。

その仮眠はほんと一瞬。

ドアをノックする音で起こされる。








●グーグル翻訳、役に立つ
ドアを開けるとトーマスが赤い手帳の様なモノを持っていた。あ、日本国のパスポート。

トーマス:「おい、KOU。パスポートが戻ってきたぞ」

KOU:「・・・ありがと」(まだ3時間くらいしか寝てない様な気がするんだが、なんで起こしに来たんだろ?)

トーマス:「もう、外に出て回れるが、どうする?すぐに行くか?」

眠い・・・もう少し寝ていたいけど、なかなか来れないトコまでじいちゃんの慰霊に来ている訳で、

この時間は惜しいな。

KOU:「行こう」

すぐに着替えてロビーに降りる。

しかし、パスポートを受け取って、すぐに出られるかと思ったら、おばさんに呼び止められました。

おばさん:「あんたの○×△〒√$を教えてよ」

KOU:「はい?」

おばさん:「あんたの○×△〒√$を教えてって言ってるの」

KOU:「???」

無愛想な感じのおばさんの問いかけを理解出来ないのにビビってトーマスを見た。

トーマスはゆっくりと、赤ん坊に語りかけるような口調・まなざしで

「KOU、お前の○×△〒√$を教えてほしい」

だから、○×△〒√$ってなんなの???

トーマスとおばさんは顔を見合わせて、「コイツ、『○×△〒√$』を理解出来ないのか?」みたく、

困った様な顔で僕を見ている。





『あっ、そうだ




このホテル、WI-FIがつながったじゃない。

グーグル翻訳、使えるかも知れない。

僕はXPERIAを取り出し英語⇔日本語翻訳モードにして、トーマスに電話に語りかけてもらう。

エントランスにいたモンゴロイド系のニコライもその様子に興味もったようで、近くにやってきた。

トーマスは訝しげな顔をしながら

「○×△〒√$」

翻訳された日本語は・・・さっぱり意味が判らない。

・・・ダメだ、英単語言ってる筈なんだがな。。。

でも待てよ、ロシア語で言ってもらったらどうだろう?

翻訳モードをロシア語⇔日本語に変更して、

KOU:「ゆっくり、ロシア語でしゃべってみて」

トーマス:「$√〒※£∫」

表示された日本語は・・・『職業』!

KOU:「僕の職業?」

トーマス:「その通りだ!すごいな、このケータイ」

ニコライ:「ワンダーテレホンだ!」

トーマス:「これがあれば、お前1人でロシア人と何でも話せるじゃないか」

KOU:「そう思うだろ?だけど、WI-FIがあるところしか使えないんだ、それ」

トーマス:「なんだって?WI-FIエリアの中だけ?傑作だ、HAHAHA!」

そんな感じで、僕たちはホテルを出る。




(つづく)