上海に行こうと思った目的はいくつかあったのだけれど、
その中のひとつは『かつて爺さんが見た景色を見てみたい』という思いだった。

その昔、ウチの爺さんは徴兵されて中国大陸に派遣されて戦った。
上海も訪れたと聞いているが、観光目的の僕と違い、
何の恨みも無い相手と砲火を交える事はさぞかし苦痛で、恐怖だったろう。
彼はその後、満州でソ連軍の捕虜となり、シベリアの収容所から帰って来れなかった。
その70年後、僕が見た上海はとても平和で、見て色々と感じる事があった。
僕達は同じ景色・建物を見ていたとしても、全く違うものに見えているんだろうな。
出発日の朝、ホテルのTVでCCTV(中国中央電視台)の番組を見た。
西遊記のドラマをやっていた。お茶屋の子が好きだと言っていたのはこの番組だろうか?
セリフひとつひとつは理解できなかったが、動きがコミカルで面白かった。
CCTVのロゴは、実はウチの会社の顧問がデザインし、プレゼンを突破して採用されたものだ。
自国の国営放送のロゴが日本人の手によるものだという事を知っている中国人はどのくらいいるだろう?
逆に、それを知っている日本人がどのくらいいるだろう?
僕の仕事はようやくこの大陸に少しずつ入りこめている程度だが、
僕もいつか15億人に届く様な仕事をやってみたいな。
こんな風に考えられるなんて、僕は本当にいい時代に生まれたと思う。
会う事のなかった爺さんも、きっと喜んでくれているだろう。



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