●2023年9月16日土曜日16:09(レバノン現地時間)
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ウーバー(だったのかどうかも不明なクルマ)でレバノン南部「スールのまち」に到着した僕は、BROMPTONくんと共に投宿先のホテルに向かっていた

スールの町なかの道もクルマでぐちゃぐちゃだったが、この旧市街の細い路地だけはクルマが通れない幅のため、例外的にとても静か。










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気温は28~29度程度、空気は乾燥している。時折吹き抜ける風は気持ちよい

ふと耳をすますと、あたりからかすかにセミの声も聞こえる。












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迷路の様に入り組んだ街角のあちこちで、聖人とおぼしき像を見かける。

『このあたりはムスリムよりクリスチャンが多いのかしら?』

通りにイスを置いて井戸端会議中のおばちゃんは白人系で、チャリを押しながら静かに歩く僕に「ハロー」と声をかけてくれた。








●『宿はこの建物だろうか?』
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でも、看板らしきものは見当たらない。

オフラインナビがモロッコ旅(2019)の頃よりかなり高精度になったのは確かでも、看板の無い建物に入るのは躊躇われるものだ。






●正面でなく、狭い路地に面した側面に小さな看板があるのに気づく
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スール・ボンティーク・アパルトメント。

よかった、間違いなくここだ。ホテルというか、ゲストハウスだな。

しかし、いつもの旅の様な「到着」の安堵感は一切ない。

『もし、カード使えなかったら泊まれないぞ












●とにかく、チェックインを試みよう
Checkin


表にBROMPTONくんを置いたまま、無人のロビーへ。

古い建物をリノベして整えられたフロアは、予約サイトで見た通り素敵。

KOU「ハロ~ゥ・・・

ほどなく奥から32~3歳位とおぼしきふくよかな白人女性がニコニコしながら出てきた。

おかみさん「ハロー

KOU「予約したKOUですニコニコ」

努めて笑顔で、パスポートを見せる。

おかみさん「遠くから来てくれたのね。ありがとうニコニコ」





さて、運命の分かれ道。





KOU「宿代は90ドルですよね? カード払いでお願いします

極めて自然な流れで、おかみさんに積極的にクレカを差し出す。

おかみさん「あら、カードは使えないわよ


KOU「ぐふっ














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03.(レバノン)
レバノンのゆううつ 篇














●予感はしてたけど
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キャッシュ、足りねえ。

野宿・・・か?

日本でもやったことないのに、難民も野犬もいるこの土地で?

間違いなく危険な目に遭うだろう




おかみさん「・・・?」

KOU『ハッ!』

とにかく、トラブル化を防ぐために「支払い意志の強い善良な旅人」であることは判ってもらわんと。

KOU「まずいな、現金が足りればいいけど

おかみさんに聞こえる様に英語でつぶやきつつ、「足りない」と知ってる財布のドルを数えて見せる。

彼女も気になる様子で眺めている。

KOU「・・・まずい、足りないですわ

おかみさん「えっ、いくら持ってるの?」

KOU「83ドルくらいです

おかみさん「・・・

泊まりにきた客が宿代持ってないことを知り、唖然とした表情になるおかみさん。

・・・一応、いきさつは伝えておいたほうがよさそうだ。








●KOU「実は・・・」
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おかみさん「空港で両替できないままタクシーに乗せられてお金が足りなくなった?」

KOU「本当はホテル代足りる筈だったのだけど、思ったよりタクシー代高くついちゃって

おかみさん「タクシー代はいくら?」

KOU「120ドル」

おかみさん「まさか!!!」

その驚きっぷりはこちらの方が驚くくらいだった。

おかみさん「相場は60ドルよ。いくらなんだってありえない!」

KOU「60ドル!? 

いや、空港で80ドルって言われたのに、移動中に財布から120ドル抜かれちゃって

おかみさん「まあ

彼女がスールからベイルートに向かう客の為に呼ぶタクシーの料金は60ドルだそうだ。

おかみさん「チップのつもりだったのかしら。ずいぶん調子いいヤツにやられちゃったのね

あいつが引き抜いたカネが相場の倍だったのはいいとして、それで宿代ちょうど足りなくなるとか勘弁してほしい!(←自分のせいである)













●カネが無くて宿に泊まれない
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『サッとカネ払えない気持ちって、こんなにキツかったっけ

借金返済に苦しんだ20代当時の、なんとも言えない「あのストレス」がチクリとよみがえる。

彼女はふーっと息を吐いて腕組みした。

おかみさん「空港で言われたタクシー代だったら、ウチの代金は現金で払えたわけね?

KOU「ええ。200ドル持ってたので」

おかみさん「ちなみに、あなたが空港で両替しようとしたお金は?

KOU「え?・・・ああ、この中国元です」

財布の中国元1,000元(この日のレートで約135ドル)を、カウンターに広げる。

(空港時点では5,000円札も持っていたが、アズールにねだられてプレゼントしてしまっていた)

おかみさん「ふうむ・・・

彼女はスマホで何か調べ始めた。

中国元はこの国で通用しないが、価値は知りたいのかも知れない。

KOU『こんなに中国元に両替してなければ宿代払えてたのにな・・・』

後悔したって、払えないものは仕方ない。

おかみさんにあまり迷惑かけても仕方ないし、とりあえず出よう











●しかし、僕はまだ運命の分かれ道の上にいたらしい

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おかみさん「あなたが十分にお金を持っている人だということはわかったわ

KOU「はい?」

おかみさん「たいした問題じゃない どうぞ、部屋を案内するわ」

KOU「?????」





なんだ、この展開は?

カネの問題は何も解決していない。

もしや、発音が下手で「払える」と誤解されたのか??

ハッキリ伝えたほうがいい。

KOU「意味がわからない。僕は宿代払えんですよ

おかみさん「だから、そんなことは問題ですらないって

それより、せっかくの今日の時間を大切に使って!!」

KOU「!!」

おかみさん「外の自転車も部屋に入れて、とりあえずゆっくりするといいわ












●「KOU・心を洗う旅のテーマ曲(*v.v)。。その2」(猫叉劇団「Afterimage d'automne」)















●おかみさんは「大丈夫」「問題ない」「安心して」と何度も言ってきた
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おかみさん「私の提案はこうよ。

①まず、今夜はその手持ちのお金(80ドル)で食事やお酒を楽しむ。

ただし、80ドルではベイルートへのタクシー代や、その後楽しむお金としては足りない。

そこで、②そのお金は明日私が何とかする。

どう?これで安心したでしょ
?」

なぜそんなことをしてくれるのか判らないが、彼女にはカネの算段をつけるアイディアがありそうだ。

おかみさん「今、どうしようもないことは、明日考えればいい

KOU「ありがとう。そうします><。」










●おかみさん「あなたが予約した部屋なら、その自転車も簡単に入るわよ
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KOU「おおっ!ステキな部屋










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ベッドはクイーンサイズか。かなり広い。

エアコンもありがたい









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キッチンも立派で、4口のコンロやオーブンもオシャレ。オーナーのこだわりを感じる。










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なんと乾燥機まで

部屋にコレついてる宿に泊まるのは、国内外問わず初めての様な気がする。









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大型ペットボトルの水も、金欠状態の身ではいつもの3倍くらいうれしいT T









●おかみさん「明日の朝食は屋上の食堂になるわよ
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屋上は4Fで、ふくよかなおかみさんはフーフー言いながら階段をのぼって案内してくれた。











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屋根のかかっていないところに出ると、地中海と旧市街のまち並みが見える。

景色をのんびり眺めていると、鐘の音が響いてきた。

おかみさん「すぐそこにある教会の鐘ね









●町の中には崩れた建物跡も散見される
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おかみさんは景色を眺めながらレバノンの政治や金融のことを話しはじめた。ここからはXperiaの翻訳アプリを立ちあげて聞いてみる。

簡単にまとめると、この国でも以前はフツーにカードが使えたそうだ。

しかし、3年前にレバノンポンドの価値が暴落してすべてがぐちゃぐちゃになり、それ以来、銀行(この会話ではカード会社の事か?)はカードが使用された取引先の店舗にちゃんと「支払い」をしなくなったのだという。

おかみさん「私たちはもう、銀行を信用していない」

それが、このゲストハウスでカードを使えない理由らしい。






おかみさんとわかれて階段をトコトコ下りながら考える。

レバノンの事情はわかったが、僕がここに泊まれる理由はわからないままだ。

日本で、カネ持ってない外国人がホテルやゲストハウスに泊まれるだろうか?

勿論、100%断られるというわけではないだろうが、ハードルはかなり高い様に思う。

まして、僕は小さな子どもや、かわいらしい女の子ではない。いい年こいた、ただのおっさんだ。

『面倒ごとを回避するためのルールで固められた日本と、そこまで固まってない国の違いか?

それとも、単純にオーナーの人柄なのか?』

わからないが、心に沁みる・・・(*v.v)。。

2年間、疲れ切っていたココロの歯車に、少し油がさされた様な感覚。






おかみさんの言う通りだ。

はるばる、レバノンの古代都市までやってきてるんだ。

愉しもう!













●とりあえず、洗濯はしておこう
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2018年、隣国イスラエル等を巡った旅の出発の時、妹分のシーモからもらった「せんたくぶくろ」はいまだなかなか重宝。

袋で洗い、軽く絞った衣類を乾燥機にぶちこみ、シャワーを浴びて、着替えをする。

よっしゃ、スールの旧市街、海、遺跡などをポタしにいこう




(つづく)








次回

紀元前25世紀に都市が築かれたスールのまち!

旧市街、海辺、古代遺跡などの見どころに恵まれるとともに、

「レバノン」という日本と異質の文化的情緒も漂っている。

2019年、モロッコ・カサブランカ以来の海外ポタ、

果たして、僕の好奇心を刺激してくれるだろうか。




次回:レバノンの章 ビクビク!古代都市スール探走 篇



※不定期更新です。


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