●2018年9月19日 14:00頃 僕はイスタンブールのブルーモスクを眺めていた
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『早速、中を見学しにいこう

・・・この場所に来て、僕がそう思って歩き出すまでに30秒くらいしかかかっていなかったろう。







謎の男:「いい写真取れました?」








その爽やかで流暢な言葉は『日本人か?』と僕に思わせるに十分だった。

が、近づいてきた青年は、明らかにアラブの男性だ。

青年:「あと30m右にずれたほうが、6本の柱がしっかり入って綺麗に撮れますよ

KOU:「ええ~ コッチの人?ずいぶん、日本語上手いね」

青年:「4年も日本に留学してたから

KOU:「ほう、どこの大学に?」

青年:「一橋大学

KOU:「へえ、いい大学じゃないの 学部は?」

青年:「商学部に

KOU:「ああ、あそこは商学部有名だもんね~」

『一橋』という、出てきそうで、なかなか出てこない大学の名前に『ほおほお・・・』と思わされる。

※これ以降の会話も、全て日本語です。










●青年:「イスタンブールへは遊びで?それとも仕事で?
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KOU:「遊びですわ」

青年:「案内しようか?久々に日本の話とかもしたいし

KOU:「ああ、いいよいいよ、自分で勝手に見て回るから

青年:「遠慮しないでよ。ガイドじゃないし、別にお金とかいらないよ

・・・青年は非常に爽やかな外見と、『声質』で得をするタイプなんじゃないかと思う。

ここに至るまで、僕は警戒心とか微塵も感じなかった。









●青年:「あるいは、何か困ってる事とかない?」

・・・実は、このワード、この後、イスタンブールにいる間、度々聞く事になるフレーズ。

おそらく、何かしらの目論見があって旅人をキャッチしたいトルコ人が使うワードの様に思う。

KOU:「・・・そういえば、困ってることがあるんだよ」

青年:「ん?なになに?」

KOU:「実は、『BROMPTON』という自転車を修理できる店を探しているんだ。特殊なパーツが壊れちゃって…」

青年「?」

僕の旅の話と、ぶっ壊れたBROMPTONの話をすると、青年はちょっと真面目に考えた様な表情になった。

青年:「なるほど・・・お店のアタリは着いてるの?」

KOU:「一応、検索して出てきた店が2軒。でも、僕はトルコ語はひとことも判らないので・・・」

青年:「じゃあ、僕が問い合わせてみよう」

・・・青年は、僕からBROMPTONくんの状況を詳しく確認して2軒の店に電話し、トルコ語で色々話していた。

青年:「ダメだ、そういったパーツはお店には置いてなくて、取り寄せなければダメだって。

  そもそも、イスタンブールから遠くて、直しにいくのが大変だよ」

KOU:「そうか、ダメか・・・」

青年:「ちょっと待って、他にもあるかも知れないから調べてみよう」

彼は自分のスマホでもう2軒自転車屋を探して電話をかけてくれたが、「やっぱ、ムリみたい」と肩をすくめた。

KOU:「いや、ありがとう。まあ、そこが壊れてても走れるから、日本に帰ってから直すよ」

青年:「役に立てなくて残念だったけど、よかったら僕の職場でお茶でも飲んでかない?歩いて1分なんだ

KOU:「職場?」

青年:「雑貨とか色々置いてるんだけど、お茶とかも飲めるスペースもあってね

カフェみたいなもんかしら。まあ、せっかくの誘いだし、行ってみるか・・・










●青年:「ここは高級で有名なフォーシーズンズホテルだよ
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KOU:「おお、ここで働いてるの?」

青年:「いや、ここじゃないけど、ここ、他のフォーシーズンズには無い特徴があるんだ

KOU:「ほう、どんな?」

青年:「この建物は監獄だったんだ そんな建物使ってるフォーシーズンズは、世界でもここだけだよ

KOU:「へー

・・・青年のトルコの話や、日本の話は聞いてる人を飽きさせない面白さがいろいろあった。








●青年:「ここだよ
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青年が連れてきてくれた店は、ブルーモスクから歩いて1~2分くらいの裏通りにある、小洒落たお店だった。

アラブ系の店員が何人かいて、にこやかに挨拶をしてくる。

ガラスのドアを開けて中に入ると、なるほど、雑貨屋と言っていただけあって、

かわいらしい照明や綺麗なお皿など、色々な雑貨が置いてあった。

『カフェではなさそう・・・雑貨屋かな?』

青年:「お茶を飲むスペースは2Fにあるんだ

KOU:「ふうん・・・

青年に連れられて階段を上がると・・・









●あっ
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なんと、絨毯屋に連れ込まれていた・・・









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(トルコ) 魅惑のトルコ絨毯 







●「KOUさんはカモがネギ背負って歩いているようなものだから、気を付けないと!」
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・・・珍スポ旅のYの言葉を思い出す。

いや、ビックリ

こんな事あるんだな!

青年:「チャイ、好き?冷たいのとか、アップルのとかもあるんだよ

KOU:「ああ、じゃあ、アップルのでお願いします」








●青年:「別に、売りつけたりするわけじゃないから安心してよ
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『思いっきり電卓あるやんけ!しかも2個も

青年:「僕の商売はご覧の通り、絨毯商人でね。まあ、家業なんだ

KOU:「へえ。じゃあ、日本語が上手いのも、日本で商売してるからかあ」

青年:「いや、それは留学したからだよ。

  僕の普段の仕事はイギリスとかフランスでのヴィンテージものの仕入れなんだ」

KOU:「仕入れ?古い絨毯ってこと?」

青年:「そう。絨毯は新しく作って売るものもあるけれど、一方で、ヴィンテージものの市場も大きいんだ。

   古い絨毯の方が、今よりもずっといい素材使って、手間が掛かるような丁寧な仕事してるものが多くてね」

KOU:「ええ~?だとしても、他人が使った絨毯が売り物になるなんて、信じられないな」

青年:「でも、品質が良くて大切に使われてきたものであれば、何百年も保つし、一生モノの財産なんだ

   日本にも、古くても価値が落ちなくて、むしろ上がるものがあるでしょう。織物とか、木製の家具とか」

・・・確かに、そういうモノはあるが、絨毯にもそういう世界があったとは知らなんだ。









●KOU:「つまり、君の仕事はそういうヴィンテージを安く仕入れて、転売する・・・ということか」
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青年:「その通り

 今は、イギリスあたりの競売で、100年物・200年物が信じられないほど安い価格で出てくる事が多くて、

 そういう出物を狙っているんだ。

 日本でもあるでしょ?おじいさん、おばあさん、お父さん、お母さんが、古いイイものを大切に保管していて。

 でも、その持ち主が亡くなった後、遺族はその価値を知らずに安く処分しちゃう・・・て事が!」

KOU:「なるほど・・・そういうヴィンテージ物が出てきて、それを転売する時に証明書として使うのが、

 このカードってわけか・・・!」

青年:「その通り









●鑑定書、カッコいいデザインだ
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青年:「でも、仮に興味を持ったとしても、ヴィンテージ物には手を出さないほうがいいよ。

 価値を見極めるのは素人にはまず無理だし、むしろ、だまされる事の方が多いからね

KOU:「ふうん・・・」

・・・てっきり、絨毯をセールスしてくるのかと思っていたが、そのつもりは全く無いようだ。

トルコ絨毯だとか、それ以外にも色々面白い話をしてくれて、全く飽きないのだが・・・

『いったい、この時間は何なんだ・・・?』

・・・そう思い始めた頃、「社長があいさつしたいって」・・・と言い残して、青年はいなくなり、

代わりに、明らかに商人のにおいがプンプン漂う50代の男が出てきた。

『そういうことか!』

びっくりするくらい日本語が堪能な『社長』は、「まあ見てよ」と言って、どんどん絨毯を広げ始めた。

この流れは・・・ッ!









●おおお・・・
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・・・商売に入るのがさすがに早い!

社長:「まあ、せっかくだから色々見てってよ。見ていくだけでも全然いいよ

『見ていくだけでも』なんて絶対思ってないだろうに!

KOU:「ってか、めちゃめちゃ日本語上手いッスね。日本人じゃないの?」

社長:「26年日本相手に商売やってるからね」

そういう社長の話は面白く、フツーに色とりどりの絨毯にひきつけられていくのを感じる。

そういや、カーペット買い換えたいと思ってたんだよなあ・・・

KOU:「ちなみに、そのでかくて白くて綺麗なのだと、おいくらくらいするの?」

社長:「うん、それだと20万くらい

KOU:「高っ

社長:「まあ、大体そんなもんだけどね。ご予算はどのくらい?」









●『ご予算?』
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KOU:「別に、絨毯買うつもりでお店に入ったわけじゃないんだけどなあ」

社長:「でも、お土産にはとても喜んでもらえると思うよ

KOU:「そりゃあそうだろうけれど・・・」

・・・昔、これに似た柄の絨毯が実家にあったのを思い出す。僕の母親が好きそうなデザインだなあ、と思った。











●社長によると、絨毯の価値は概ね『生地の価値』『目の価値』『プレミア要素』×『サイズ』で決まるという
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このうち、『プレミア要素』は僕の様な素人には関係ない(騙されるので考えない方がいい)という事で、

『生地の質』と『目(模様)の細かさ』好きな品質のモノを選び、予算・用途でサイズを決めればいいという。

社長:「でも、せっかくだから、出来るだけいいものを選んでほしいと僕は思う!」

そりゃあ、あんたはそう言うだろうけど!

・・・と思いつつも、この社長、商人気質ではあるけれど、実はかなり丁寧かつ面白い人柄で、好きなタイプ。

せっかくだから、実家のお土産に1枚買おうかな。










●KOU:「2万円くらいでいいヤツないかしら?」
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社長:「うーん2万かあ・・・もうちょっとなんとかならない?」

KOU:「カツカツで」

彼は一瞬残念そうな表情をしたが、すぐに笑顔に戻って再び絨毯を広げ始めた。

社長:「まあ、ちょっと予算オーバーだけど、ホントはこんなのの方がいいと思うんだけどな」

そう言って、社長が床から拾い上げて、ピザを回転させながら延ばすように放った1枚が僕の目を引いた。

KOU:「あっ、色が変わった!」












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社長:「シルクだからね、光の当たり方で色が変わるんだ」

彼はそう言って、絨毯を持ち上げて再び床にピザ投げする。やはり、角度によって、色が鮮やかに変わる。

KOU:「それはおいくら?」

社長:「4万5000円」

KOU:「うーん、高いなあ!」

社長:「でも、喜んでもらえると思うよ」

彼はそう言って、また、床に放った。

KOU:「・・・社長、そのプレゼンテーションかなり練習したでしょ」

社長:「うん、私のキメ技ニカッ」











●それ、ください。
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社長:「毎度あり

社長は3,000円オマケして約42,000円にしてくれた。送料無料で日本に送ってくれるという。

KOU:「ホントはいつももっと値引きして売ってるんじゃないの?」

社長:「そりゃ、何回か買ってもらって仲良くなったら、たまにはこっちも赤字で売ったりもするけど、

  あなた1回目でしょう 日本の商習慣も同じでしょ」

KOU:「そりゃそうだ」

社長:「でも、いいタイミングだったと思うよ。

  今、トランプのせいでトルコリラが急落して、日本円が強くなってるからね。

  半年前と比べてその絨毯、半分くらいの価格だよ」

KOU:「えっ、マジで


社長はトルコの絨毯業界の事を色々教えてくれる。

例えば、イスタンブールの絨毯屋は日本人、フランス人、アメリカ人などターゲット国別に店が分かれていて、

商品も違うのだそうだ。

社長:「何しろ、家のサイズが違うでしょう。日本人がリビング用に買ってくカーペットは、

 アメリカ人が買ってく玄関マットよりと同じくらいか、ちょっと小さいくらいだったりするんだ

 僕の会社も、ここは日本人専門店だからこういう小さいサイズばかりだけれど、

 別店舗のアメリカ人向けの店はこういう小さいのは1枚も置いてないよ」

勿論、そちらの店は日本語ではなく英語を学んだスタッフが配置されているという。

また、そのスタッフだが、絨毯には高価な品物も多く従業員が盗み出したりする様なリスクも考えられる為、

『家族経営』が基本で、従業員を入れるとしても、一族の人間を入れる事が多いのだという。

そして、それぞれの店が狙う『ターゲット国』に向けた言葉の勉強だとか、社会勉強だとか色々するそうだ。

社長:「僕はしょっちゅう日本に行ってるからね、1年の間に2か月くらいは日本にいるかな。友達も多いし・・・

 ああ、お店の名前『アイシン』ね。日本にも同じ名前の会社あるね、トヨタ系の。

 あっちのスペルは『Aisin』で、ウチは『Aishin』。全然関係ない



・・・正直、僕をここに連れてきた青年の言葉も、社長の言葉もどこからどこまで本当なのか、まだよく判らない。

でもまあ、大半がホントの事で、『あとは値段の若干の駆け引きくらいか』という感じだった。

個人的には『楽しくて満足なので、僕的にこういうのは全然アリ』だと思った

一方で、お店の方は強引に売りつける様な事は一切なかったけど、

『それでも』

お金払う気が全然無い人がこの流れで商品買う事になったら、日本人的には不満が残るのかも知れない。

それは不毛な話なので、こういった話が初めてイスタンブールに行く『カモネギの人』の参考になればと思い、

詳述してみた。












●ロマン探求ポタ2018(*v.v)。。前半テーマ曲 KONAMI Pop'n Music(2010) ♪The Sky of Sadness 












●社長:「イスタンブールにいる間に何か困った事あったら、遠慮なく来てください
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本気なのかどうかさっぱり分からなかったが、社長とLINEアドレスを交換。

まあ、特に何もないと思うけど、なにかあったら相談できるのはありがたい。

思いがけぬ散財だったけど、いいお土産をGET出来たし、なかなか有意義な時間を過ごせた










●気付くと時間は17時だ
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3時間も経ってたのか・・・。

アヤソフィアもブルーモスクもまだ見学してないのに、もう、閉館時間じゃん

『イスタンブールは再訪確率高いし、次回見に行けばいいか・・・』

なんか、そんな事、エルサレムでも思ってなかった?ほんと、そんなにちょこちょこ出かけられる?

大丈夫なのか?この旅は











●とにかく、ホテルに戻ろう
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もう、ホテルにはBROMPTONさんが到着していてもおかしくない時間。

合流して、日没に向かう海峡の街でのポタと洒落こみたい。










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海峡を眺めながら、貝とかイカとかホタテとかの海の幸を頂き、夜風を楽しむ。

それこそ、若かりし日の僕が憧れた、欧州と亜細亜の狭間の街での時の過ごし方・・・(*v.v)。。











●さすがに歩き疲れたので、初めてトラムを使う
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日本では富山市で走っているライトレール的な乗り味だった。

ブルーモスク付近からホテルまでは約20分の道のり。

そして、ホテルの部屋に戻ると・・・














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次回:BROMPTONさんとの別れ 篇





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■ロマン探求ポタ2018(*v.v)。。INDEX
序章

Ⅰ.イスラエルの章

Ⅱ.トルコの章

Ⅲ.ハンガリーの章

Ⅳ.ルーマニアの章

終章