※この記事は読み終わるまで8分くらいです。
ヒマな時にでも、のんびりお愉しみください。




●前回までのあらすじ
DSC08596午後3時前に自転車を持っての脱出を断念

2021年11月6日(土)

恒例「木曽路ポタ」の道中、木曽の山奥に迷い込んだKOU!

5時間の死闘の果て、進めたのは区間約4kmのうち、わずか1.4km

命を守るべく日没前に森を抜けるため、14:45に決断><。!









●KOU・哀愁のテーマ(*v.v)。。(魔界塔士sa ga「なみだをふいて」スクウェア1989)













KOU『こんな ばかなー!』
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ぼくは  BROMPTONくんをすてて にげさった!

? 「おい KOUが いなくなっちまったぜ!」

? 「だまってろ!」










●『BROMPTONくん ごめんなさい あたし バカだった><。』
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命に関わる事態の次に、マジで最悪><。!

しかし、もはや彼は諦めるしかない。

『くそ、道はこっちか・・・!?』








●・・・けもの道だった
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ダメだ、人間が通れる道じゃねえ><。

迷ってる時間も無い。

沢を辿って脱出しよう









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木曽路2021・秋
(6)

「崩壊ノ古道ヲ脱出セヨ!」篇












●時刻は15:03
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余裕を持って脱出したい16:00まで1時間を切っている。







●行く手は酷い状況が続く
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ただ、圧倒的に身軽になった。

例えば、この場所はさっきまでなら突破に軽く10分以上かかったろうが、今なら道筋を検討しながらでも2分程度で突破できる。

時速1kmは間違いなく回復している。

『これなら、本当の日没までには確実に谷を抜けられる!』









●沢の幅が少しずつ大きくなってきた
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真夏並みに用意した飲料水は既に飲みきっている。

ここで給水していこう・・・

『・・・ん?』











●なんかあるぞ
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丸太が平らに積みあがった光景。

不自然にもほどがある「水平っぷり」。

『・・・え?これ、もしかして・・・』








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桟道じゃないの!?








●桟道(さんどう)とは

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「世界という大きな書物」 中路正恒公式ブログ


急峻な崖地などに道を通す工法だ。

江戸時代の図絵や、芭蕉などの俳句などにその様子が遺る。

世界的に有名なものだと、中国の「長空桟道」や「蜀の桟道」がある。





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(蜀の桟道)











●目の前をよく見ると・・・
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「一般的な桟道のイメージ」とはちょっと違う。

まず、あまりに崖底(水面)に近い。

また、丸太を何本も重ねて道を造る行為も、労力的には不自然・・・。

ただ、パッと見では急峻な谷川(沢)に沿って続く「木造の道」にしか見えないのだ









●何十年か前までは子どもたちの通学路だったんだよな・・・

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いくつかイメージが浮かんでくる。

『子どもたちの安全性を考えて、あえて低い場所に桟道を通した?』

『あるいは桟道というより土橋の類のものを、沢沿いに整備していた?』







●・・・判らにゃい
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ただ、ガチな山林プロだらけだった村人が、陸上にまともな道(通学路)を通せない区間に、特殊な道を築いたのは間違いあるまい。

そして、彼らが整備した片道4kmの山の中の道を、子供たちが毎日登下校していた事はゆるぎない事実なのだ。









『どのような光景だったろうか(*v.v)oO』



知りたい。


激しく知りたい。

この道の真実や、往時の模様は木曽地域の土木に詳しい専門家などに相談すれば判るだろう。

無事、森を出て明後日以降日常に戻ったら、早速、木曽路関係者の方々にこの写真をお見せして、色々聞いてみよう

※この道に関しては、目下、地元の行政やツテを辿って調査中だ!








ちなみに、本当に桟道の類だった場合、結構貴重な土木遺産」ではないかと個人的に思う

だって、「日本 桟道」で画像検索しても、現代の写真など残骸や遺構の写真すら出てこない。

出てくるのは「昔の図絵」や「木曽の桟(キソノカケハシ)の現代の模様」などだけだ。


Kiso_River_and_Kiso_no_kakehashi

(木曽の桟)

見ての通り、既に現代道。

江戸時代に尾張藩が崖に築いた「石垣」はあるけど、木曽路大ファンの僕の感覚ですら、現場で昔日の情景を感じた事は無い。

登山系の桟道ならその辺にもあるかもだが、街道の桟道は、この程度が精いっぱいだろう。







●それはともかく!
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依然、僕は山の中

脱出を急がねば、大名古屋ではなく、この谷の土に還る事になる!






●・・・ん?
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倒木地帯を抜けた?

さっきまでより、歩きやすくなった





●と、思ったら・・・
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沢下りっぽくなってきた

川幅の狭いところをヒョイと飛び越えて対岸で木をくぐって進む。

BROMPTONくんを抱えていたとしたら、この場所を越えるのも一苦労か・・・








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今度は幅5mの沢に行く手を遮られた。

否応なくくるぶしまで水につかり、渡渉する。

11月の山の水は、さすがに冷たい。








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その先、まあまあ歩きやすい場所と・・・






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倒木地帯と・・・







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沢渡りを繰り返しながら進み・・・






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だんだん、沢が急になってきた







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浅いからゴアテックスブーツ装備であったなら、水に濡れずに済んでいたろうが、今日の僕の装備は底がすり減ったスニーカー











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滑って非常に危ない







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『おいおい、スプラッシュマウンテンじゃないよな







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見下ろすと、小規模な滝が連続する区間らしい・・・。






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慎重に下りてゆく。









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滝の落差は、最大でも単体で2m足らず。

両手さえ空いていれば、岩をつたって降りるのは困難ではない。








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ただ、水深が深い場所が出てきた。

そういう場所に限って足場が限りなく狭かったりする








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この気温・水温で落水して上半身まで濡れるのは危険だ。

VAIOがおしゃかになるのも困る。









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深みの手前、足場がほとんどなく、木の根っこに行く手を遮られる場所などはマジでキツイ






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両手で木の根っこを掴み、崖のヘリの石を足場に、慎重に突破







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往時はどんな道が通ってたんだろう??








●15:51
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だいぶ日が陰ってきた。

贄川まであと1kmくらい。

16:00までの谷の脱出はムリか・・・








●・・・と
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「おや?」

これは、もしかして・・・







●「道」!だ
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確かな路盤。

倒木の無いクリアな視界。








●その先に、神社!
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人里の気配が・・・









●その先、かすかに自動車の轍がある状況になり・・・
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橋だ








●16:04
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奈良井川を越えて、谷を脱出

運命の分かれ道(10:04)からちょうど6時間。

キョリおよそ3kmの谷をようやく抜けた









●急速にあたりが暗くなってきている
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目の前の木の陰の暗さを見てゾッとする。

「もしかして、間一髪だったか?」

今、谷の中にいたとしたら、既にかなり暗くなっている筈だ。

場所によっては足元の石や行く手の枝も見えず、移動速度はかなり遅くなっていただろう。

「15時時点でBROMPTONくんを放棄して脱出」を実行してたら死んでたかも知れない。








●贄川宿
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『11時には通過していた筈なのに・・・

朝の意気込みとのギャップの大きさに、ミジメな気持ちでトボトボと駅へ向かう






●16:20 贄川駅到着
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「とりあえず」

予約した宿に行くため、約30km離れた「木曽福島」に向かう。

・・・と、無人駅の反対側のホームに木曽福島に向かう電車がやってきた








●あえなく乗り過ごす
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走って跨線橋を渡る体力など残っていない

次の電車は1時間後。







●17:18
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日没後は一気に寒くなってきた。マジで危なかった。

今頃、BROMPTONくんは谷の中で星を眺めているだろうか。






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実は・・・というか、当然・・・というか、


僕は全てをつぶさに観察してきた。

今日、歩いた沢沿いの全てを。



・倒木、茂みの少ないルート

・棘の植物が繁茂する場所

・入水しないと越えられない箇所

・全ての滝の足場、などなど






その上で、ひとつの結論に達していた。

『明日、もう一度行ってみる価値はある』

そう思ったのは「最悪地帯(倒木地帯)の出口近くに到達していた」のが判ったからだ。

救出にチェーンソーが必要な環境ではない。

そして、倒木地帯ほど厳しい場所も無さそうに思えた。

加えて「命の危険は殆ど無さそう」「一方的に下り」という事も確認できた。

『今日の地獄より格段に進めるのは間違いない』

っていうか、難所である滝に差し掛かる度に、BROMPTONくんを上から下に落とせばいい。

当然、それを繰り返すうちにBROMPTONくんはボコボコに壊れるだろうが、「進める」。

そこまでやってタイムアップになったとしても、来週回収に来れば間違いなく救出できる。

つまり、僕は明日、『BROMPTONくん救出作戦』にチャレンジしたい。





ただし。


今日の装備では100%ムリ。

少なくとも、ゴアテックスのトレッキングブーツと軍手はほしい。

可能であれば、BROMPTONくんをカラダに固定する為のベルト・ロープ・・・そんなモノがほしい。

しかし、ここは木曽谷。

南北80km以上の谷の中に、人口3万人もいない様な地域。

果たして、そんな道具、都合よく手に入るものだろうか?

全ては、電車の行先「木曽福島」の状況にかかっている。

・・・僕は、やってきた17:20発の電車に、1人乗り込んだ。

(つづく)




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