木曽路2021・秋
(5)
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「詰み」篇
※この記事については茂みの写真が多いため、スマホの方は横長にして読む事をおススメします。
※10~12分くらいで、のんびりお愉しみください。
●11:54(運命の分かれ道から)1時間50分
幅10mの土砂崩れの突破に45分を費やし、前進。
分かれ道から500m、贄川まで3.5kmほどの山の中だ
画面に表示される情報。
●現場のイメージと全く一致しない
各所の崩落で「道」をトレースする事はもはや不可能。
気付くと、「道(たぶん)」のはるか上を進んでしまったりする。
こういう崖、写真で見ても現場にいても、一見、ヒトが歩ける様に錯覚するけど、とんでもない。
まして、自転車など押し進むと、命に関わる。
『ウニモグでもこの谷は抜けられまい・・・』
しかし、時折、カモシカが茂みから飛び出してきて、縦横無尽に崖を走り回って消えてゆく。
『凄いな』
もし、僕がカモシカだったなら、贄川までの3.4kmの崩落地帯も20分で駆け抜けられるだろう。
●12:21(「運命の分かれ道」から2時間17分)
進行方向の脇に、祠(ホコラ)の様なものが見えてきた。
休憩所・・・?
●あっ!
大きめのお地蔵さん!
●『地獄に仏』とはまさにこのことか
優しいお顔の地蔵さんに、イライラしていた感情が落ち着いて救われた気持ちになる。
お地蔵さんの年代は判別できなかったが、長い間、多くの人が地蔵の顔に癒されたのではなかろうか。
建物は頑丈な屋根と腰掛けがあり、非常に安心感がある。
山道の「休憩所」であり「悪天候時の緊急避難所」でもありそう。
●ありがたい・・・
寝転んで少し休んでいきたいが、そんな時間もない。
そして、その先・・・
●現在位置を全面的に理解できなくなった
ここは、谷底に向けて20m近く下る場所のはず。
ナビは急角度に曲がった道を示すが、崖しかない。
●『マジで転落しかねない・・・』
・・・幅30cmくらいの路盤が残っている。
奈落に落ちないように、一歩一歩慎重に歩いていく。
しかし、ナビ画面と周囲の環境が一致しない気がして仕方ない。
●谷が大崩落して地形が変わったようだ
よく見ると、崩落の手前に路盤らしきものが見える。
また、その路盤に沿って「石垣」らしきものも見えた。
それなりに整備された道だったらしい。
●『・・・道はこんな感じだったろう』
今は「ただの崖」だ。
結構深いぞ
BROMPTONくんを抱えては、崖下に降りるのすら大変。
●・・・これ、僕じゃ揚げられないかも- -;
ここで「詰み」なのか?
『冗談ではない』
この程度で、僕はへこたれない
●なるべく路盤に近いところを探す!
2.5mなら、創意工夫で何とかなるかも知れない。
●「えいや!」
石を踏み台に身長を20cm高くして、谷底から1.5m程度の斜面に置く
そして3mの崖を登り、幅20cmの路盤の上からBROMPTONくんを・・・
●引き上げる!
ハア、ハア、ハア…
突破した・・・
●現在時刻13:10(「運命の分かれ道」から3時間6分経過)
進んだキョリおよそ800m。
時速はなんと266m。
贄川まで残り3.0kmをこの速度で進めば 11時間かかる。
…実は、あと2.5kmで「集落の生活道路」に出ると考えていた。
ブログ的に「生活道路で奇跡の逆転」を演出するつもりだった。
しかし。
その2.5km先まででも10時間弱かかる計算だ。
あと2時間頑張れたとして、さらに明日も8時間?
極めてマズイ。
この後、僕だけ脱出、予約した御嶽山麓の宿泊先(70km先)に行けたとする。
明朝、その宿から贄川駅に来れるのは、急いでも10時頃だろう。
駅からBROMPTONくんの元まで爆速2時間で済んだとしても…
暗くなる16時までに使える時間は4時間しかない。
●BROMPTONくんの救出は・・・
間に合わない!
8時間の救出時間を確保するなら、朝8時にBROMPTONくんと共にいないといけない。
それは、この谷でBROMPTONくんと共に夜明けを待てば可能だが
●夜明けを迎えた時、僕は凍死済みだ!
当然、BROMPTONくんを運ぶどころではない!
●詰むも詰んだり
明らかに、僕はもう終わってる・・・
●「シャーラップ!!」
諦めてたまるか!
千本の倒木だろうが・・・ハァハァ
万本の小枝だろうが・・・ゼィゼィ
●突破し続けてやる!
ハアハア
・・・おや、状況が少し変わってきたような・・・???
●谷川が流れ始めた
ここから先は沢伝いの進路になるらしい。
『・・・もしかして、沢沿いに行く手が開けて少しラクになるかも???』
少し、ドキドキしながら先に進む
その僕の期待は
大逆転への光明は
●完全に絶たれた
崖+倒木に水が参戦しただけ
地獄だ!
もう、戦争だ戦争!
生死を賭けた戦争!
上等だ!
来なよ!!
やってやるよ!!!
さすがにもう・・・
●14:04(運命の分かれ道から5時間)
もう、ダメだ。
・・・もう、BROMPTONくんを抱え上げる力も、ヤブを掻きわける力も無い。
判断時間より1時間早いけど
『潮時』だろう。
●『だけど・・・』
『諦めた後で、少し先は開けたりして・・・』
BROMPTONくんとフロントバッグを置く。
そして、一縷の望みだけ携えて、行く手の偵察に出る。
●これが本当の「山奥」。。。
荷物無しで進むのですら一苦労・・・
ところどころ沢を飛び越えないと先に進めない。
恐ろしいことに、その沢の幅が少しずつ太くなり、ちょっとした渓谷の雰囲気が漂い始める。
そして・・・
●『ああ・・・』
ダメだ・・・。
わずかに残っていた路盤が消滅している。
谷川の両隣は崖。
そして、谷川の先は・・・
『ましゃかの滝?』
沢下り・・・。
この後の脱出ではスニーカーで渓流に突っ込むことになりそう。
靴が浸水したら最後、進むほど壮絶な靴ずれを起こして、足の裏はマメだらけになる。
最悪だ。
そして思う(- -;)
疲労してなかったとしても。
万全の装備だったとしても。
BROMPTONくんを担ぎ、
無事に沢下りする方法など
僕には見当もつかない。
●詰んだ。
とうの前に、覚悟してた事。
しかし、すんごいショックorz
●ヨタヨタとBROMPTONくんの元へ戻る
偵察で200mほど往復するのに20分かかっている。
そして、まだ14時台なのに日差しが陰ってきたのに気付く。
『…脱出しないと><。』
●贄川まであと2.3kmだった
アタマがぼーっとして、何も考えられない。
判ること
①もうBROMPTONくんを運べないこと。
②ほどなく、ここが日没を迎えること。
●まさか、こんなお別れになるとは
せめて雨雪をしのげる様にカバーをかぶせていくか。
・・・いや、少しでも誰かが見つけやすい様にしておくべきか。
後で、誰かに依頼して救出をお願いする事になるかも知れない。
それが叶わなかった場合でも、
いつか通りかかる人がタフな人だったら、持ち帰れるかも知れない。
少しでも目立つ様に、輪行袋を近くの木に引っ掛けていこう。
そして、いつまでもここにいられない。
沢下りの途中で日没を迎えたら、間違いなく僕は死ぬ。
すまん、BROMPTONくん。
今まで本当にありがとう。
さようなら。
●脱出だ!
よろめきながら、一人、谷の出口を目指す。
朝、ホテルを出る時には思いもしなかった。
『まさか、こんな結末に終わるなんて』
(つづく)
【次回予告】
谷の出口を目指す孤独なKOU!
翌日の救出に未練を残し、懸命にルートを探す。
行く手は予想以上に険しい行程となった。
しかし、遠い過去の子供たちの足跡が...!
地形の思い出が、昔日の情景が...!
鮮やかに眼前によみがえり、僕を魅了する!
『たしかに、ここに道があったのだ!』
改めて思う(*v.v)。。
好奇心とは素晴らしい!
大切なモノがもう還らなくても
僕は先に進める・・・!
大切なモノがもう還らなくても
僕は先に進める・・・!
他方、迫る夕闇!凍てつく谷水…!!
僕は無事に里へ下りられるか!?
次回 「崩壊ノ古道ヨリ脱出セヨ!」篇
※多忙のため、次回更新は12月末頃の予定です。
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コメント
コメント一覧 (2)
ご無事で何よりですm(_ _)m
KOU
がしました
コメントありがとうございます。
いやあ、「毎年恒例の1泊2日ポタ」のつもりで出かけたのが、とんだことになりました- -;
色々な「体験」するつもりでアチコチ出かけていますが、こういう体験はキツイですね!
それでも「発見」があるとワクワクしてしまうという・・・^ ^; 愉しくて仕方ありません(笑)
KOU
がしました