※ここから先の記事については茂みの写真が多いため、スマホの方は横長にして読む事をおススメします。


●2021.11.06(土)10:04
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ここは長野県塩尻市贄川地区の古い道の上(の筈)。

僕はBROMPTONくんとともに運命の分かれ道を「進む」ことに決めて、急な斜面を滑り降りた。







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その代償でサイコンセンサーの結束バンドが裂けたため、外してカバンに入れておく。

『ああ、もうこの坂押し上れないな・・・』

・・・どんなに苦労したとしても『この時、ここで無理矢理でも引き返しておけばよかった』






●しかし、今まで見えなかった道が開けてしまった
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こうなると、進んでしまう。







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乾いた葉っぱが、さわさわと、後から後から降ってくる。








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先の状況は僕を落胆させた




『・・・しかし、これしきでくじける僕ではない』



ひとつひとつ「障害」を越えながら進む。











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木曽路2021・秋
(4)

「最悪のポタ」篇








●10:21(運命の分かれ道から17分後)
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明らかに「走れる道」ではない。

ここも、一直線に行けそうに見えたりするのだが・・・











●すぐ前で道が切れている
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「橋が・・・無い









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出現した「沢」は水深は無いに等しいが、路盤から2mほどのまあまあの深さ。








●転倒しないよう、慎重に降りる
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『マジでもう戻れないや』

対岸の小崖、頑張ってBROMPTONくんを持ち上げる。

しんどい。疲れる

よく、自転車を両手で高々と掲げた人の写真を見る。

インスタでも、BROMPTONを高々と掲げている女の子を見たりもする。

あれ、すごいなと思う。

僕はBROMPTONくんを肩に担いで山道越えたりする事はよくやるけど、腕の力であんなに高く持ち上げる自信は無い。








●小崖をあがると、また倒木
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早くも、アタマがクラクラしてきた







●「自然に還りつつある」ではない
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既に「自然に還ってしまった」道の猛威。









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明らかに僕を・・・









●圧倒している!
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ハア、ハア、ハア

進路を間違え、崖を3m押し上げてようやく復帰した路盤は酷い状況。

『これ、ヤバいのでは?』




僕にはもう、現状のBROMPTONくんを持ち上げる力が無い

何が何でもクソ重いフロントバッグを外さないとダメだ。

このままでは贄川宿に着くどころか、目の前の倒木すら越えられない





『があっ!









●あっさり外れた・・・
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RIDEAの金具をぶっ壊して外す覚悟だったが、意外。

後で一発で外れる様に改造しよう・・・もし、家に持ち帰れたなら。








●「六連倒木」を突破できた
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フロントヘビーが改善し、BROMPTONくんの押し歩きも格段にラクになった。



『しかし・・・』




『運命の分かれ道』から1時間経過して、進んだのは300m。

時速300m・・・カブトムシの歩行速度と同じだ。










●まずくないか?

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3.6km先の「贄川」には遅くとも15時には着きたかった。

そうすれば、木曽福島まで自走で行けて「旅」の格好が着くからだ。

しかし、15時まで残り4時間かけて300m/hで進めるのは1.2km

3.6kmのうち1/3しか進めず、山奥から全く出られない。

これでは、旅の成立が危うい。


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『と、いうより』

既に「旅の成立」なんて状況ではないのでは?

今日の塩尻市の日没時間はおそらく17時前後。

6時間後の日没時間に至っても3.6kmの半分、1.8kmの地点にしか辿り着かない計算だ

ガチキャンプ装備で来てたとしても日没後に行動するなど論外な場所なのに、今日はクマ除け爆竹どころかトレッキングシューズやヘッドライトすら無い。

文字通り一歩も動けなくなる。



もうひとつマズイのが「寒さ」。

今朝、夜明け前の塩尻の気温は平地で2℃だった。

谷あいのこの辺は日没後ほどなく気温は5℃くらいまで下がり、明け方は間違いなく氷点下だ。

この谷で身動き出来なくなった場合、ウインドブレーカーの下に着替え用のTシャツやYシャツを重ね着して、更に薄い輪行袋かぶってビバークを試みたとして、その冷気に12時間以上耐えられるだろうか?



『凍死するに決まってる』




つまり、「既に、何が何でも日暮れ前の脱出を考えなければならない段階」だ。











●行く手はどんどん険しくなっていく
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特に、左手方向の崖が脅威だ。










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滑り落ちたらそれなりに負傷しそう。

通信出来ないこんな山奥で足を骨折したら、結構な確率で死ぬ。

悪い事に今日は使い古しのスニーカーで来ているし、本当に、結構な確率でそうなる。







『…もはや生還について考えねば ><。』









とりあえず、冷静になれ。

まず、どうあっても僕が死ぬことは、無い。


見たところ、全ての装備を投棄して身一つで行動すれば、僕が抜けられない場所ではない。

先の状況は判らないが、もともとは子どもたちが通学していた谷。

何十mも滑落する断崖などは絶対に無いハズ。

そして、日没(17時頃)まで6時間ある。

目的地・贄川までのキョリは残り3.5km。

どう考えてもこの僕が身一つで抜けられぬワケがない。

絶対、超余裕。

僕はこの森を日没前に絶対に出られる。

よし、落ち着いた(*v.v)。。







次に「救出の優先順位」だ。

残酷だが、確認しておかなければならない。

①最優先:僕自身

②二番手:VAIO入りPCバッグ

③三番手:フロントバッグ

④最下位:BROMPTONくん

※③には②も入っている。


・・・辛いが、こういう事になる。

BROMPTONくんは最も救出したいパートナーであるが、同時に、今の僕にとって非常にハイリスクな存在。


自覚していた。

BROMPTONくんを携えている限り

ハッキリ言って今の状態は遭難



ここから先、一番恐ろしいのは抱えたBROMPTONくんと一緒に斜面などを転落すること。

鉄製の車体がぶち当たったり、BROMPTONくんがテコになって関節が変な方向に極まったりすれば、僕は簡単に骨折してしまうだろう。それが容易に死につながる状態が、今だ。

『いざという時、真っ先にBROMPTONくんを谷底に投げ捨てるしかない時が来るかも知れない』





・・・最後に「制限時間の確認」だ。

日没は17:00頃の筈だが、ここは谷あい。日没時間より1時間前、つまり16:00にはある程度暗くなる(危険)と考えるべきだ。

余裕をもって、僕は16時(5時間後)までには森を脱出しなければならない。

その時間までにBROMPTONくんとの脱出が難しい事が明白となってしまった場合には・・・15時(4時間後)を迎えた時点で、どこにいたとしても、BROMPTONくんは放置して脱出する事にする。


「4時間かけて時速300mで進めるのは1.2km」


すでにわかっていた。

僕は、BROMPTONくんとお別れする事になる。







その後のことはどうするか?

正直、明日1日使ってもBROMPTONくんを救出できる自信が全く無い。

恥を忍んで地元の方に相談して脱出を手伝ってもらうしかないかも知れない。

協力が得られなかったら、思い出だけ持ち帰って放棄するしかない。

置き去りにされたBROMPTONくんは1週間程度で雪に晒され、その後1~2週間程度で雪に埋もれて冬を過ごし、春、雪解け水で流されて土砂に埋まるか、何年か後、ここを通る物好きに錆だらけの姿をさらす事になる筈だ。






『く・・・><。』

ロマン探求ポタ(海外ポタ)の思い出が走馬灯の様に脳内を駆け巡る。

『ゴメン・・・こんな所に連れてきてしまって><。』

本当に、後悔した。







●11:23、恐れていた状況がやってきた
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「・・・

道が・・・完全に、無い。

右上の崖が土砂崩れを起こし、路盤ごと谷底へ押し流してしまったらしい。.







●道の先を覗き込んでみる
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路盤は数m先で崩落していて、一度降りたら復帰困難な「奈落」と化している。

奈落はじんわりと沢水が流れる泥地で、仮に落ちたら、自分の体重で谷底に滑り落ちるだろう。

空身で滑り落ちるだけなら大ケガの心配はなさそうだが、土砂崩れを起こすかも知れない。

路盤の崩落幅はおよそ10m。

奈落に続く崖には古い単車がしがみつくように引っかかっていた。








●『詰んだ
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正直、身一つですら反対側の路盤に渡れるか不安だ。

ただ、ケガの不安は無さそうなので、身一つで崖を登り土砂崩れをトラバースできるか確認する。

急斜面は水が染みていて「よくない状態」だが、倒木などを使えば反対側に渡れそうだった。

結果的には、向こう側の路盤に渡って、VAIO Z入りフロントバッグを安置することができた。

しかし、BROMPTONくんを抱えて無事に越えられるとは到底思えない。

ここにいるのが僕でなくケイン・コスギだったとしても、ギャラ無しでは途中で投げ出す筈だ。











『・・・危険を冒すのはやめて、このまま先に進むか・・・』













●・・・やはり、簡単には諦められなかった
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思い出が詰まり過ぎた僕の半身。

簡単に置いていけるわけがないじゃないか><。

慎重にルートを検討して、空身で暫時ルートチェックしてみる。

しかし、土砂崩れの表面はそもそも限界で、数秒僕の体重がかかっただけで崩落すると悟った。







『もう、崩れちまう』







BROMPTONくんを折り畳み状態にして、トラバースに挑む。

途中で手放す事になる可能性は極めて高いが、路盤に放棄して錆びだらけになるよりは、足掻いた結果、土砂の下で眠ってもらうほうが彼にとっても良い様に思えたのだった。

BROMPTONくんのサドルを右肩にかけ、2mの崖を登り、目の前にある幅10mの土砂崩れを眺める。

体重をかけ続ければ、1歩あたり5~6秒で崩れると想定したルートがぼんやりと浮かび上がった。








ひと足4秒で進むんだ。

土砂崩れ上を斜めに3mほど上昇しつつ

約12m先の向こう側の倒木まで辿り着く。




















踏み出す前にBROMPTONくんのメインフレームを強く握りしめた。

『君と旅が出来て本当に光栄だった』



・・・行くぞ。






















ザッ!


ザッ!


ザッ!


ザッ!


ザッ!

















ガシャッ!!









ザザッ!!















ドザザザザザ・・・

































●・・・突破できた!!
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結果的に、路盤より8mほど上方向にトラバースしていた。

歩き始めて間もなくBROMPTONくんを抱えきれなくなったが、気付いたら予定よりかなり高い位置にある「少し保ちそうな」足場で立ち止まっていたのだ

その場で手早く自転車形態に戻し、やや下りながら土砂崩れを渡り切り、行く手を遮る倒木にしがみつき、その上にBROMPTONくんを何とか押し上げて、あとは共に崖を数m滑り降りて切り抜けた。





信じられない。

二度は出来ないだろう。







しかし、全く喜びはなかった。

もはや、難所を一つ越えたくらいでどうしようもないのは明白。

なにしろ「運命の分かれ道」から500mしか進んでいない。

ますます後戻りできなくなっただけ。

しかも、時間は1時間45分も経っている。

どっちにしても、BROMPTONくんは脱出できない。




僕は「詰み」に向けて、BROMPTONくんと共にノロノロ進んだ。




(つづく)




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